私たちの腸内環境は生後1週間の間に基礎がつくられ、数か月から1年ほどで完成するといわれています。そして一度完成した腸内フローラは加齢や食生活の影響を受けるものの、基本的には大きく変わらないと言われています。
つまり、赤ちゃんが一生付き合う腸内環境は、生後1年の間に決まってしまうのです。腸内細菌は食べ物の消化・吸収に関わっているだけではなく、ホルモンやビタミンの産生・免疫力・体質・アレルギー・精神や性格にまで影響を与えているといわれています。
これだけカラダに多大な影響をあたえる腸内細菌が生後たった1年の間に定着してしまうのであれば、できるだけ我が子に質の高い腸内フローラを持ってほしいと願うのが母親ですよね。
実は赤ちゃんがよい腸内フローラを得られるかどうかは母親次第です。妊娠中そして出産後のママの腸活が非常に大切なのです。
ママが赤ちゃんに最高の腸内細菌をプレゼントしてあげるには、一体どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
自然分娩で出産すること
赤ちゃんはお母さんのお腹にいる間は子宮の中で、無菌状態で成長します。出産の際に産道を通りながらママの腸内細菌のシャワーを浴びるのです。そして生まれた瞬間からお母さんの肌、空気中などからさまざまな細菌を取り込んで免疫力をつけていきます。
出産の際に産道を通らない、つまり「帝王切開」で生まれた赤ちゃんはママの腸内細菌のシャワーを浴びることができないため、十分な量・種類の腸内細菌を取り込むことができません。そのため、帝王切開で生まれた子どもはアトピーや喘息などのアレルギー疾患のリスクが高まるというデータもあります。
自然分娩を望んでいてもやむを得ず帝王切開になってしまう場合もあります。だからといって悲観する必要はありません。自然分娩よりも腸内環境が整うまでに時間がかかってしまいますが、腸内細菌の定着が決まる1年のあいだにこれから述べる「母乳で育てること」「離乳食に気をつけること」「ママ自身の腸活を意識すること」で優れた腸内フローラを築くことができます。
粉ミルクではなく母乳で育てること
母乳は赤ちゃんにとってただの栄養源ではありません。
実は、母乳には腸内細菌の善玉菌である「ビフィズス菌」が含まれています。母親の体はわざわざ赤ちゃんのためにビフィズス菌を腸から血液を通して乳腺に運んでいるのです。さらにビフィズス菌が腸内で増殖できるように母乳にはビフィズス菌の好物である「オリゴ糖」まで含まれています。赤ちゃんはオリゴ糖を消化できません。よってそのまま腸まで届き、ビフィズス菌の増殖に役立ちます。
このようにして母乳を与えられた生後間もない赤ちゃんの腸内細菌の約9割は、善玉菌であるビフィズス菌で覆われます。ビフィズス菌は免疫力の弱い赤ちゃんのために病原菌から体を守るという重要な役割を果たします。
また、母乳にはさまざまな抗体が含まれており赤ちゃんを感染症から守ることができます。さらに、母乳はアレルギーの予防にもつながります。母乳に含まれる「ムチン」と呼ばれる物質が赤ちゃんの腸粘膜を覆って、そこから食物アレルゲンになりうる物質の吸収を防いでくれます。母乳に含まれる「n-3多価不飽和脂肪酸」もアレルギー疾患を予防する効果があります。
母乳のメリットは他にも存在します。母乳によって予防接種の効果を高めたり、将来生活習慣病などの疾病予防につながったり、味覚の発達を促したり、高いIQを得られたりするなどといわれています。
一方、粉ミルクで育った赤ちゃんの腸内ではビフィズス菌のエサであるオリゴ糖がないためビフィズス菌が育ちにくく、悪玉菌が増殖しやすい傾向にあります。母乳で育った赤ちゃんの腸内環境と粉ミルクで育った赤ちゃんの腸内環境を比べると、善玉菌と悪玉菌のバランスが大きく異なることがわかっています。
また、粉ミルクは牛乳からできているため牛のタンパク質を含みます。これがアレルゲンとなりアレルギーの原因につながることがあります。また、赤ちゃんは腸内環境が十分に整っていないので粉ミルクを摂取すると腸粘膜が傷ついたり、炎症を起こしたり、感染しやすくなったりする可能性もあります。
母乳がでない体質、あるいは働きにでなければならないなど粉ミルクで育てなければならない環境にある場合は、粉ミルクにオリゴ糖を加えたり、ママ自身がビフィズス菌の摂取を意識したりしましょう。そして可能な限り、母乳を長期間与えられるように意識しましょう。
むやみに消毒・殺菌しすぎないこと
赤ちゃんにとって、外界の細菌を体内に取り入れることは必要な行為です。腸内細菌だけでなく、雑菌を取り入れることで免疫力を少しずつ高めていきます。
従って何でも消毒・殺菌・除菌と神経質にしているとかえって赤ちゃんの免疫力を低下させてしまいます。特にママの肌にはさまざまな腸内細菌が付着しています。赤ちゃんが触れることでママの腸内細菌を取り込むことができます。
もちろん不衛生は病気の原因にもなるので避けなければなりません。しかし洗いすぎ、過剰衛生はかえって赤ちゃんの免疫力を低下させてしまうということを忘れないようにしてください。
ママ自身の腸活も大切
前述した通り、赤ちゃんの間に腸内フローラが出来上がり、大人になってから腸内環境を大きく変えることは難しいとされています。
しかし、食生活を意識することによって善玉菌を増やし悪玉菌を減らして腸内環境をよくすることは可能です。ただし、一時的に増えた腸内細菌がそのまま定着してくれるわけではないので、継続して腸活することが大切です。
従って妊娠中のママはできるだけ腸内環境を整えて、赤ちゃんに優れた腸内細菌をプレゼントできるよう準備しておく必要があります。善玉菌を増やす食事(発酵食品、食物繊維、オリゴ糖、乳酸飲料の摂取)を意識して、悪玉菌を増やす食事(食品添加物や加工食品、ジャンクフード、肉中心の食事)は極力避けるようにしましょう。
さらに、産後も赤ちゃんは母乳からそしてママの肌から腸内細菌を取り込み続けます。妊娠中から産後1年間は継続した腸活を心がけるようにしましょう。
以前、腸内フローラの効率的な整え方(記事はコチラ⇒「腸内フローラのタイプを知って効果的な腸活ライフを!」)と腸内フローラの天敵グルテンフリーのすすめ(記事はコチラ⇒「グルテンは危険?!グルテンフリーで腸活をすべき4つの理由」)について記載しておりますのでコチラをご一読頂き、赤ちゃんのためにも素敵な腸活ライフをお送りください。
離乳食も腸活を意識すること
生後5ヶ月あたりから赤ちゃんの離乳食が始まります。最初はとにかく食べやすい物からのスタートになるかと思いますが、慣れてきたら離乳食の中でも腸活を意識した食事を取り入れるようにしましょう。
「腸によい食事がわからない」という方は和食を心がけるとよいです。和食の調理には欠かせない味噌・醤油・みりん・お酒といった調味料は全て発酵食品です。また、和食だと自然と魚中心のメニューになるでしょう。
さいごに
近年、日本国内ではアトピーや食物アレルギー、喘息をもった子どもが増えてきています。
これらの原因を一つに特定することは難しいですが、「帝王切開で生まれる赤ちゃんの割合が増えていること」「母乳で育てられた赤ちゃんの割合が低下していること」が影響している可能性も否定できないのではないでしょうか。
つまり、赤ちゃんの頃に優れた腸内フローラを築けないために、免疫機能が十分に発達せずアトピーや食物アレルギー、喘息といった免疫疾患を患っていると考えられます。
人体に多大な影響を与える腸内フローラとは一生の付き合いです。その腸内フローラが生後1年の間に定着し、その大半が母親の影響を受けるのであれば、母親としてできる限りのことはしてあげたいのではないでしょうか。そのために、妊娠中、出産後の腸活は大切です。
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