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アレルギー疾患を患う子供が増えている??原因と予防方法について
今回のテーマはアンチエイジングとは関係ありませんが、子どもの腸内環境とアレルギーの相関性についてご説明します。
近年、アレルギーを持つ子どもの数が増加していることをご存知でしょうか。2016年2月に厚生労働省が発表した「アレルギー疾患の現状等」の資料によると、全国民の2人に1人が喘息・花粉症・アトピー・食物アレルギーといった何らかのアレルギー疾患を持っており、その数は急速に増加しているとしています。
さらに年齢別に見てみると若年層(0~19歳)、つまり子どものアレルギー患者が増えてきているのです。
アレルギーの発症原因
その原因としては、環境汚染や過剰衛生、抗生物質の使用、食生活の変化などが挙げられます。どれも1つでアレルギーの発症原因を解明できるわけではなく、これらの要因が複雑にリンクしていると考えられます。そもそもアレルギーは、私たちの体を外から守る防衛システムである免疫機能の過剰な反応によって発症します。つまり「免疫状態を異常にする原因が全てアレルギーを引き起こすきっかけになる」といえます。
「私はアレルギーなんて子どもの頃、全くなかったのに、なぜうちの子はアレルギー体質になってしまったんだろう……」と悩んでいるお母さんも多いと思います。それでは、子どものアレルギーを改善するあるいは予防するためにはどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。
アレルギーの改善・予防には、アレルギーの発症要因を避ける
アレルギーを改善するには先に述べた環境汚染、過剰衛生、抗生物質の使用、食生活の変化といったアレルギーの発症要因になることから避けることです。
環境汚染
工場や車の排気ガス、黄砂、PM2.5といった大気汚染物質によって、免疫機能が過剰に反応してアレルギーを発症してしまいます。大気汚染物質を完全に避けることは容易ではありませんが、工場周辺には近寄らない、交通量の多いところなど空気の汚れた場所ではマスクをするなどの対策が必要です。
過剰衛生
戦後、日本は高度経済成長によって衛生状態が劇的によくなりました。その中で、私たちは常に合成化学製品を使った洗剤で体を清潔に保ち、衣類を洗濯し体に必要な細菌までも排除してしまいました。小さい頃からこのような過剰衛生の中で成長するため、免疫機能が上手く発達しなくなってしまったといわれています。もちろん、体のために不衛生は良くありません。しかし、毎日体や髪を化学洗剤でゴシゴシ洗うといった「洗いすぎ」の習慣を見直してみましょう。
抗生物質の使用
抗生物質は体に悪い菌だけでなく、体にとって必要な菌も殺してしまいます。例えば、抗生物質を服用すると腸内細菌が死ぬことで菌のバランスが乱れてしまい、下痢を引き起こすことがあります。免疫力を保持するためにも抗生物質を必要以上に服用しないことをおすすめします。
食生活の変化
環境汚染など外部環境の変化は自身で気をつけるには限界がありますが、食生活の見直しは意識することで改善が可能です。
現代の日本人にアレルギーが増加した大きな要因の1つとして、食生活の変化が挙げられます。昔は保存食というものは自然な食材を使用した干物や漬物などしか存在しませんでした。しかし、現在は長期保存可能なパンやお惣菜、お菓子にジュースなどどこでも手軽に手に入れることができます。これらの食品には食品添加物が大量に含まれています。また、手間をかけて出汁をとらなくても化学調味料を使用すれば簡単にコクのある料理をつくることが可能です。
しかし、食品添加物や化学調味料は、自然界でつくられた野菜や果物とは異なり、化学合成でつくられた「異物」です。そのため、体内に蓄積するとアレルギー物質として認識し免疫システムが過剰に反応してしまいます。また、アレルギーだけではなく、脳の障害やガンを引き起こす可能性が示唆されているものも存在します。
全ての添加物、化学調味料を防ぐことは不可能ですが意識して避けるようにしてください。特に、妊娠中の女性や子どもは摂取を避けるようにしましょう。さらに、見落としてはいけないのが食生活の欧米化です。昔から食べられてきた日本食は日本人にとって消化しやすい食べ物ばかりです。一方で、ピザやステーキ、フライドポテトなどの欧米食は最近になって日本人が食べるようになった消化しにくい食品、つまり私たちの体には合わないものです。
では、消化の悪い食べ物はなぜ体によくないのでしょうか。
それは「腸内細菌の悪玉菌の活動を優位にさせてしまうから」です。その結果、免疫機能の異常を引き起こしてしまうのです。私たちの腸内環境は腸内細菌の善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスによって体にさまざまな影響を与えることがわかっています。腸内フローラ(複雑な腸内細菌の生態系)によって、腸内細菌は消化・代謝・ビタミン等の生産・免疫機能などの重要な役割を発揮します。
それでは、腸内環境がどのようにアレルギーの発症と関係しているのかについてみていきましょう。
アレルギーと腸内細菌の関係
先に述べた通り、腸内細菌は体の免疫機能の維持に関わっています。その中でも代表的な免疫応答が免疫グロブリンIgA抗体の産生です。IgAは腸管で病原菌の侵入阻止や毒素の中和の働きをします。
理化学研究所が発表した2012年4月、2014年7月のデータによると、
・腸内で善玉菌が減少し悪玉菌が増殖すると炎症を誘導する免疫細胞が活性化 ・バランスのとれた腸内フローラは免疫細胞を正しく誘導し、IgA抗体を産生するといった免疫系の形成に有効 ・免疫細胞がIgA抗体の産生を介して腸内フローラのバランスをコントロールしている
ということがわかっています。このことから、腸内細菌のバランスが免疫機能に重要で、そのバランスが崩れると免疫機能が異常に活性化してしまい、アレルギーを引き起こしてしまうと考えられます。
その他、アレルギーの発症に関わる腸内細菌の菌種まで特定されてきています。例えば、善玉菌である乳酸菌の1種Lactobacillus spp.という菌種は成長初期で腸内細菌に定着化することでアレルギーの発症を減少させることがわかっています。また、善玉菌であるビフィズス菌の菌種Bifidobacterium adolescentisについても成長初期での定着化がアレルギーを防ぐ可能性があることが示唆されています。
これらの特定の菌種を体外から摂取あるいは移植することで、アレルギーを抑制する治療の開発研究も進められています。このように、腸内細菌がアレルギーと密接に関わりあっていることがわかると思います。
腸内細菌でアレルギーを治すあるいは防ぐには?
腸内細菌とアレルギーの関係がわかったところで、実際にどのようにすれば子どものアレルギーを治すあるいは防ぐことができるのでしょうか。
善玉菌が喜ぶ食事を摂る
免疫機能の正常な働きには善玉菌の役割が大切です。善玉菌が喜ぶ食事とは「食物繊維の豊富な食事」と「発酵食品」です。
食物繊維の多い食品は、植物性食品である海藻類、豆類、きのこ類、野菜、果物です。食物繊維は生で摂取するよりも茹でた方が食物繊維の量が増えることがわかっています。調理法も工夫してみてください。発酵食品としては、ヨーグルト、漬物、味噌、納豆、キムチなどが挙げられます。また、食事からの摂取が難しい場合はサプリメント等を利用して善玉菌を増やしましょう。
悪玉菌が喜ぶ食事は摂らない
悪玉菌が喜ぶ食事とは、消化の難しい、肉・揚げ物などです。悪玉菌はこれらをエサに生育し、有毒物質を放出して腸内環境を悪化させます。ジャンクフードや洋食など肉中心の食事を控えて和食中心の食生活を心がけましょう。
また、「完全栄養食」という位置づけにある牛乳には注意が必要です。牛乳は、人によっては消化が難しいことがあります。消化されずに大腸に届くと悪玉菌のエサになってしまいます。さらに牛乳には牛のさまざまなホルモンが含まれています。特にホルモンの影響を受けやすい子どもは牛乳を大量に摂取することはお勧めしません。牛乳を飲まなくてもカルシウムは食品から十分摂取できます。
最後に抗生物質、食品添加物、化学調味料は腸内細菌を殺してしまうことも忘れないでください。
母親の腸内細菌は新生児に伝播する
新生児は腸内細菌を母親から受け継ぐと考えられています。妊娠中の女性は腸内環境をよくすることで、新生児の腸内環境にも良い影響を与えられる可能性があることが期待できます。このことについての詳しい記事はコチラ⇒「赤ちゃんが生涯付き合う腸内フローラはママの腸内細菌によって決まる!」をご覧ください。
ある研究では、新生児の腸内フローラの定着が遅れると免疫機能に重要なIgA抗体の産生能力が低下することがわかっています。
妊娠中の母親の腸内環境を整えることは、子どものアレルギー発症予防にもつながるかもしれません。
まとめ
子どものアレルギーを改善する、あるいは防ぐにはアレルギーのきっかけとなる要因を排除する必要があります。環境汚染、過剰衛生、抗生物質の使用、食生活を意識して避けていくことが大切です。この中でも特に大切なのは普段の口にするもの、食生活の見直しです。
私たちの体は普段口にしているものから栄養やエネルギーが補給されています。食品添加物、化学調味料は避けて、和食中心の食生活をこころがけましょう。アレルギーの発症を抑えるには腸内環境を良くすることも大切です。善玉菌、悪玉菌のバランスを崩さないように意識しましょう。
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